

2003年に出た書籍ですが、文庫版で読みました。
第三者である教会の神父を語り部にした、家族の物語。
主人公は父、母、兄、弟の4人家族の内、弟。
優秀な兄(未成年)がした犯罪をきっかけに、みるみるうちに崩壊していく家族。
崩壊していくのはこの家族だけではなく、
前後して、無理矢理開発されようとする街も、
主人公の周辺をかためる、名前をもたされた人たちも、
それぞれに何かが崩壊していたり、していったりする。
人はどこまでいっても一人だと。
けれども一人同士が一緒にいれば、一人ではないと。
何もかも捨てたはず、
守るべきものも何もないはず、
それでも「帰る」べき場所は必ずある、
それが「ふるさと」。
焦げ付くような、胸を掻きむしるような、乾いた文章。
乱暴な世界をこれでもかと、痛々しいほど淡々と言葉が重ねられていく。
崩壊した主人公の家族は、作中では結局崩壊したまま終わります。
けれども絶望したまま終わらないのは、遺されたものがあるからでしょうね。
こういうことがあったと、語り継いでくれる人たちがいる。
「人は本当に一人ではない」ということが印象に残りました。
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生きてると、「結局は一人だなー」と思うことがあります。
もちろん本当に一人で生きていけてるわけはないんだけど、
自分をしっかり持っていなくてはやっていけないわけでね。
決断するのは、自分。
そういえば私、あまり他人にものを相談しないかも。
仕事は相談するけど、自分に関することはあんまり。
「大事なことを相談しないで決めるので、驚かされる」とずいぶん前、古くからの友人に言われたことがあります。
でも、自分で決めてそれぞれに行動していても、帰る場所はある。
それが家族だったり恋人だったり友人だったりするんだよね。
え、当たり前?
まぁ、だからこそ普段から考えてるわけじゃないので、
本読んで、ちょっとそんなことを改めて思ったわけでした。