2010年03月01日

映画『ずっとあなたを愛してる』

『ずっとあなたを愛してる』(←いきなり音楽が鳴るので要注意)
ヒューマントラストシネマ有楽町にて先週観てきました。
初めて来たけど、座席前の足元がゆったりしてていいなぁ。
中も広すぎなくていい感じだけど、上映中に出入りする人の床をきしませる音が奥まで響くのはどうなの?
座席の床、可動式なの?

おフランス映画ですね。
殺人罪で15年間服役した姉・ジュリエットを、年の離れた妹・レアが空港へ迎えに来たところから始まる。
刑務所にいた話は話の半ばまで伏せられている。
というより、姉に気を遣って皆口にしないんだな。

レアにはベトナムからの養子が8歳と幼児とふたりいて、大学で教鞭をとり、旦那も何か会議がある仕事。
ほか、病気でしゃべれなくなった旦那の父親、昼間だけ頼んでるらしい家政婦。
ジュリエットとレアの父は服役中に死亡、母はおそらく認知症で施設に。
こういう状態で、15年間離れて暮らした、前科者の姉を引き受けた妹は偉いよなぁ。
しかもいやいやどころか、離れて暮らした日々を積極的に取り戻そうとするかのように、包み込んで。
旦那はいい顔しないけど。
子どもたちがジュリエットになついているのが救い。
じいちゃんも、しゃべれない分は貼れるメモに書いて、ペタペタ身体に貼りあって子どもたちと会話してるのがなごむ。

殺人罪であること、被害者は当時6歳の実の息子であること、もとは医師だったこと等が話の流れで少しずつ明らかに。

この姉は妹が引き受けてくれたから良かったけど、犯罪者の立ち直りの大変さは、住む場所の確保だけではない。
職探し、人づきあい等々、様々な場面で、自らの人生の空白期間をどう説明するかの試練がある。
当然、受け入れてくれる人ばかりではない。
自然、周囲との間に壁を作ってしまい、それがスムーズな社会復帰をますます妨げる要因にもなる。

印象的だったのは、妹家族の友人たちとの会食で、過去を言わされるはめになり、
正直に言ったけどほとんどの人が冗談と受け流した後の、外の焚き火の場面。

妹の大学の同僚が追いかけてきて、刑務所で教官をしていた経験から、ジュリエットに理解を示す。
中の人間も外の人間も紙一重だと言って。

刑務所で教官をしていたのは、監督の経験そのもの。

気を遣わなくていい存在が出来たことで、心を開き始めるジュリエット。
いつしか、妹のダンナも、ジュリエットに子どものお守りを任せるまでに受け入れるようになる。

まだ人間関係がうまく結べない頃だったと思うけど、
カフェで目が合った行きずりの若い男とホテルで色々…の後の場面。
「よかった?」みたいなことを聞く男に
「全然ダメだった」と答えるのは、あんまりだよなぁ(笑)。
男、無言で出ていく。
こういうの聞いてくるほうもどうだかと思うけど、最初に誘ったのはジュリエットのほうだもんなぁ。
冗談でも本気でも、男は傷つくよねぇ(笑)。
ホテル代はジュリエットが全部払ってあげたよね、きっと、さすがに。
「全然」て(笑)。この映画で唯一場内で笑いが起きた瞬間でした。

最後のほうでようやく、なぜ息子を殺したかが明らかに。
不治の病で治療を痛がる息子を助けるために、病院から連れ出して注射で殺害した。
病名をはっきりさせないあたり、うまい。
はっきりさせたら、どこかからクレームこないとも限らないもんね。

理由を示す証拠を偶然見つけて姉を問い詰める妹は、
姉の苦い記憶を掘りおこさせた後、真に姉を受け入れることが出来たのだろう。

「ずっとあなたを愛してる」
これは、妹から姉への思いと、
母が自ら殺害した息子への思いと、時を越えた両方の気持ちなんだなぁ。

最終的に、主人公・ジュリエットは試用期間をクリアして正式に就職を決め、新しい住まいも見つけてくる。

最初と最後で顔色も顔つきもすっかり変わり、
やつれて地味だった中年女が、落ち着いた雰囲気のあるマダムになっていたのがリアルだった。

監督に刑務所教官経験があるからか、
犯罪者の社会復帰の大変さが様々な場面で描写されるも、
総じてきつすぎず、穏やかに、でも厳しい現実として描かれていたと思う。
犯罪者の社会復帰には、周囲の理解と支えがいかに大切かよくわかる。
そして、他人から理解されるためには、自ら勇気をもって心を開く必要があることも。
ソフトな雰囲気がしたのは、フランス語や街の雰囲気の力もあるのかも。
観終わった後の気分は、重さや暗さを残さない、温かいものだった。


posted by エマ at 23:16| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画・舞台話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 「ずっとあなたを愛してる 」★★★★☆ クリスティン・スコット・トーマス、エルザ・ジルベルスタイン主演 フィリップ・クローデル 監督、117分 、 2010年2月6日公開、2008,フランス,ロングラ..
Weblog: soramove
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