『白夜行』
(東野 圭吾)
今更感はありますが、ドラマが放送されている間に書いておこう(^^;;
“原作とドラマは全然違う”ということはよくありますが、
この作品もそのひとつでしょう。
結論からいうと、どちらもその媒体の特徴を生かした楽しみ方ができると思います。
原作では、主人公2人−雪穂と亮司の間に直接のやりとりは全く描かれていません。
ですが、前章で雪穂が作っていたイニシャル入りの小物入れを、次章で亮司が持っているなど、
必ず近いところに、本文に描かれていないところで2人が接触していることを読者に対して匂わせる記述があります。
それぞれの周囲で起こった出来事は、一見何の関連もないことのようなのに、
出来事を整理していくと、恐ろしい偶然が浮かび上がってくる。
その積み重ねにより、表面上穏やかにしていても、裏にどんな顔をひそめているのかわからない、底知れぬ恐怖、闇が見えてくる。
読みすすめるうち、いくつか謎のままの事件もあるけれど、おそらく犯人は○○だろうと、読者が容易に想像できるように慣らされているのが恐ろしい。
テレビでは、2人の間のやりとりや感情が、セリフや行動で直接的に描かれています。
接点がなければ1話ごとの盛り上がりや全体的な物語の統一感を生み出しにくいからかもしれませんが、
それはそれでいいと思います。
2人の物語が同時進行している状態を、関連のあるものとして結びつけ、
さらに次の週へ引っ張るだけのテンションを1クール13回くらい、週1回1時間とないドラマでやられても、
途中で飽きて見なくなってしまうと思うので。
(と言いつつ今まで何度か観ていませんが)
現に、ドラマは原作と違って、現在の2人の姿をまず見せてから、回想する形で構成されていますし。
「なぜこんな状況になったのか、これから遡ってだんだん説明していくよー」ってことですよね。
(原作では、その回想にあたる、雑居ビルで死体が見つかる事件から始まりますね)
ドラマで素晴らしいのが、主人公の小学生時代を演じる子役2人。
子どもだけれど、俳優さんなんですよね。
小学生が置かれる状況としてはかなり厳しいドラマを、演じきっていました。
特に雪穂なんて、大人になってからより子どものほうが上手いと思う(爆)。
いちばん言いたいのはコレでした。
文字で小説だけ読むのと、ドラマで俳優の顔や動きがあるのと、
その俳優が気に入らなければどうしようもないけども(笑)、
「まぁいいんじゃない?」くらいに思えるのなら、さらに、「配役いい!」なんて思えるのなら、
その上で小説を読めば、顔や場面が浮かぶ分、特に背景となる場所など想像しやすくていいんじゃないかな。
切り離して楽しむくらいのつもりでいたほうが、原作があるものについては、どちらも楽しむことができていいんじゃないかと、
よく「原作と全然違う!」などと原作のある映画やドラマを観て怒ってる人は、
楽しむ要素を一つ捨ててるようで、もったいないなーと思いますね。
『白夜行』に関しては…
説明的なことが好きじゃないので、原作のほうが私は
断然好きですね〜。
というわけで、鬼のように分厚い文庫本(笑)へのリンクを貼っておきました↑。
分厚いけれど、一気に読めますよ。
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